ピノ・ノワール Pinot Noir – 気まぐれで繊細な黒ブドウ

Grape Variety

世界中のワイン愛好家を虜にするワインの数々を生み出す「ピノ・ノワール」。あのロマネ・コンティを生み出すのもこのピノ・ノワール種のブドウです。

ピノ・ノワールは「繊細で気難しいお嬢様」と喩えられるように、栽培環境や醸造の影響を受けやすい品種です。そんなピノ・ノワールについて詳しくご紹介します。

松ぼっくりのような形のブドウ!

ピノ・ノワールの原産地はヨーロッパ東部と考えられています。
形が松ぼっくり(Pommes de pin)に似ていて粒が小さくギュッと詰まっていることから、ピノ・ノワールという名前がつきました。

品種の特徴

萌芽も成熟も早い品種です。
冷涼から温和な気候に適しており、フランス ブルゴーニュ地方などの涼しい地域でよく育ちます。
しかし寒すぎてもダメ、湿度が高くてもダメ、乾燥してもダメ、雨が多くてもダメ…と環境に左右されやすい品種です。
イチゴ、ラズベリー、レッドチェリーなどの赤く酸味のある果実の特徴がよく現れます。
気候が暖かすぎると品種の特徴であるこれらの新鮮な果実の風味が失われ、ぼやけた印象になってしまいます。

果皮が薄いため、比較的色の淡い赤ワインを造ります。
酸味が高く、ライトボディからミディアムボディになることが多いです。
タンニンは少ない傾向があります。

変異しやすい品種でもあり、ピノ・グリやピノ・ブランはピノ・ノワールの変異種であるとされています。

栽培地域は涼しい地域に集中

栽培地域は世界中にわたります。前述の通り比較的涼しい気候に適するブドウ品種のため、栽培地域の中でも気温の低い産地に集中している傾向があります。

フランス・シャンパーニュ地方 12,890ha (関税総局統計2020年度 5県の数値の合計のうち39%)
フランス・ブルゴーニュ地方(ボージョレ地方を除く) 11,870ha(ボージョレ地方を除く地域のうち39.5%を占める)
アメリカ・カリフォルニア州 19,119ha (2021・黒ブドウ品種第二位、全体で第三位)
アメリカ・オレゴン州 9,531ha (2020・黒ブドウ品種、全体ともに第一位)
アメリカ・ワシントン州 332ha (2021・ワシントン州全域の栽培面積24,281haのうち1,37%を占める場合の推計)
オーストラリア 3,949ha (オーストラリア全域の栽培面積146,244haのうち2.7%を占める場合の推計・出典 National vintage report 2022) 特にタスマニアが重要な生産拠点
ニュージーランド 5,807ha (2022・黒ブドウ品種第一位、全体で第二位)
チリ 4,179ha (2020・黒ブドウ品種第六位)
スイス 3,802ha (2021・黒ブドウ品種、全体ともに第一位)
南アフリカ 1,193 ha (2021・黒ブドウ品種第七位)
イギリス 1,174 ha (2022・黒ブドウ品種、全体ともに第一位)
ルクセンブルク 124 ha (2021・黒ブドウ品種で第一位、全体で第六位)
カナダ ブリティッシュ・コロンビア州を中心に生産
日本 北海道、長野県、山梨県、青森県などで生産

ピノ・ノワールのワインの種類やスタイル

ピノ・ノワール種のブドウからは赤ワインを造ることはもちろん、シャンパーニュなどのスパークリングワインの生産も可能です。

シャンパーニュではシャルドネやムニエとともにブレンドされることが多いですが、ピノ・ノワールのみ(あるいはムニエとのブレンド)のブラン・ド・ノワールのシャンパーニュも存在します。

スティルの赤ワインの場合は一般的には他の品種とのブレンドは行わず単一品種のワインとなります。
また、繊細な果実味を保持するために発酵や熟成の過程での樽の使用は慎重に行われます。

ピノ・ノワールの赤ワインのなかでも特に品質の高いものは熟成するとキノコや森の下生えなどの発展した風味を呈します。

今飲みたい ピノ・ノワール3選 *随時更新

アロース・コルトン プルミエ・クリュ/ ルイ・ラトゥール(フランス・ブルゴーニュ地方)

筆者が「ピノ・ノワール好き」「ブルゴーニュ好き」になったきっかけがこのアロース・コルトン産のピノ・ノワールです。ピノ・ノワール特有の赤系果実の繊細な果実味を楽しむことができます。


フラワーズ ピノ・ノワール(アメリカ・カリフォルニア州)

フランス・ブルゴーニュ地方に匹敵するほど筆者が愛してやまない産地がアメリカ・カリフォルニア州のソノマ地区です。カリフォルニアというと太陽燦々な気候とボリューミーなワインを想像する方が多いかもしれません。ソノマ地区は海岸に近かったりサン・パヴロ湾からの霧の影響を受けたりして涼しい地域が多く、豊かな果実味とともに引き締まった酸味のワインが楽しめます。中でもこのフラワーズのピノ・ノワールはお気に入りの一本。ブルゴーニュグラスでいただきたいワインです。


フェルトン・ロード ピノ・ノワール コーニッシュ・ポイント(ニュージーランド・セントラルオタゴ)

ピノ・ノワールの銘醸地としてその名を知らしめつつあるニュージーランドのセントラル・オタゴ。セントラル・オタゴは緯度が高いことによる冷涼な気候の恩恵を受け、上質なピノ・ノワールのワインを産出しています。
その中でもこの「フェルトン・ロード」ワイナリーはパーカーズ・ワイン・バイヤーズ・ガイド第7版において「アタ・ランギ」「リッポン・ヴィンヤード」「ペガサス・ベイ」 「テ・マタ・エステート」と並び5ツ星生産者の評価を受けており、世界的にも評価の高いワイナリーです。


記事中のデータの出典は注釈のない限り日本ソムリエ協会が出版するソムリエ教本2023年に基づきます。

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