タイトルの通り、先日東京・虎ノ門で開催されたマスダさんの試飲会にお邪魔してきました。
50種類をも超える南アフリカワインを一度に飲むなんて初めてで貴重な経験です。お誘いくださった三宅さん、ありがとうございます。
さて、ほぼすべてのワインを試飲してみた結果、特によかったものや印象に残ったものを中心にこちらに載せていきたいと思います。
白ワイン:全体的に甲乙つけがたい高クオリティ
南アフリカの白ワインといえば、シャルドネやシュナン・ブランから作られるさまざまなスタイルのもの、ソーヴィニヨン・ブランのように個性的な香りの特徴を持つものなどがまっさきに頭に浮かびます。
実際に飲んでみると南アフリカの気候を映した力強く華やかかつ爽やかなスタイルの白ワインが多かったように思います。飲んでみるとどれもおいしく、価格も1,000円台から十分においしいものが揃っており、さすがだなあという印象でした。
一方で、これは抜きん出て品質が高い、大目玉になるようなものは私はなかったかなという印象でした。どれもおいしく、基本的にコスパも良いので十分に優秀でした。それがゆえ、飛び抜けた個性があるものに出会ったというよりは全体的な品質の高さを再確認したという総論に至ります。
1. ポークパインリッジ ソーヴィニヨン・ブラン 2023 (ブーケンハーツクルーフ)
こちらは余韻に感じたグレープフルーツの皮のような旨味が印象的でした。手頃な価格にバランスの良さ、最後にちょっとしたアクセント…とかなり優秀。エチケットも可愛くて印象に残るので、覚えてもらいやすいですしおすすめもしやすいですね。
2.ソーヴィニヨン・ブラン 2022 (コンスタンシアグレン)
こちらはソーヴィニヨン・ブラン主体ですが、セミヨンがブレンドされています。セミヨンが全体を柔らかく仕上げていてエレガント。こういうのもなかなか良いなと思いました。
5.ポークパインリッジ シュナン・ブラン 2023 (ブーケンハーツクルーフ)
こちらは前出のワイナリーのシュナン・ブラン。かなり南国感があってボリューミーです。価格もかなり良心的。
7.シュナン・ブラン 2023 (ステレンラスト)
ステレンボッシュのワイナリー「ステレンラスト」のエントリーレベルの白ワインです。こちらも前のものと同じブドウ品種のシュナン・ブラン100%です。
果実感が全面に出ていた5番のものとは対照的に、こちらはよりしっかりと樽の香りが感じられ、クリーミーなニュアンスもたっぷりでリッチな仕上がりです。普段カリフォルニアの手頃な価格帯のワインを飲んでいる方はお好きかもしれません。
9.オールドブッシュヴァイン シュナン・ブラン(ステレンラスト)
酸味しっかりと感じられ、豊かな果実味の中にもエレガントな佇まいが際立ちます。オールドブッシュヴァインとワインが冠しているとおり、こちらのワインは樹齢40年以上の古木のブドウから作られています。それなのにどこか若々しさの方が印象的な、不思議なワイン。これで小売価格3,400円ですから、かなりいいなと思いました。
Platters South African Wine Guide 2024で5つ星、98点の最高得点を獲得したワインだそうです。納得のクオリティ!
18.ステレンボッシュ シャルドネ 2022 (ラステンバーグ)
19.エステート シャルドネ 2020 (ポールクルーバー)
このあたりはIWSC(International Wine & Spirit Competition)でゴールドを受賞、トロフィーワインショーでベスト・シャルドネ&ベスト白ワイン賞を受賞した、第三者的評価の高いワイン。いずれも樽発酵を行っている影響か、かなり樽のニュアンスが強いように感じました。この2つを比べるなら、19のポールクルーバーのエステート シャルドネ2020の方が、果実味や酸味とのバランスという点で秀でているかなと思いました。
20.シャルドネ 2022 (アタラクシア)
南アのムルソーとも評されるアタラクシアのシャルドネ。久しぶりに飲みましたが確かにおいしい。ただ、やはり高いのがマイナスポイントかと思います。6,000円出せるのであれば、他にも選択肢があるようにも思います。
それでもあえて私がアタラクシアを選ぶとするならば、その酸味からくる骨格感と、余韻まで続くミネラル感。ここまで20本の白ワインを飲んできて、余韻まで余すところなくおいしいと感じるのはこのアタラクシアだけではないでしょうか。
スパークリングワイン:定番に隠れ、意外な高クオリティ泡発見
スパークリングワインの数は多くはないものの、評価が盤石であるクローヌの存在が大きいなと思いました。
その一方で、私たちを惹きつけたのは意外な一本でした。それがこちら。
24.スパークリング ブリュット NV (リーベック)
全くノーマークだったのに、一口飲んでそのクオリティにびっくり。ついつい一緒にいたヒマワインさんやアンディさん、つびぃちゃんに「この泡どう思った?」と聞いてしまいました。
華やかで清楚な香り、優しくクリーミーな泡立ち。香りや洋梨や白桃などのみずみずしい白い果肉の核果。
シャンパーニュ製法で造られた…と見せかけて、シャンパーニュ酵母を使ったシャルマ方式で造られたスパークリングワイン。これで小売価格2,300円とは、素晴らしいですね。アペロに軽く飲むのにとても良いかと思いました。
28.ロゼ キュヴェ ブリュット 2021 (クローヌ)
南アフリカワインのプロの間ではもう盤石な評価を得ているクローヌ。白スパークリングのボレアリス ブリュットも試飲しましたが、ロゼのクオリティが特段良かったように感じました。ロゼのスパークリングワインっておいしいものが少ないって言いますよね。確かに、ロゼスパークリングって普段は積極的な選択肢には入ってきません。このロゼスパークリングはわざわざ選ぶに値するのではないかと思います。
赤ワイン:総じてパワフルだが、個性はさまざま
南アフリカの赤ワインといえば、やはりピノタージュが一番に浮かびます。ところが今回の試飲会ではピノタージュのワインはごく一部。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランやメルロー、シラーにマルベックなど、それぞれをさまざまにブレンドするなどその幅の広さに驚きました。
全体的にはやはり温暖な気候の影響か果実味のパワフルさが目立つものが多かったように思います。
31.キュヴェ・リカ ピノ・ノワール 2021 (ロングリッジ)
自然発酵、ビオディナミで造られている赤ワインです。きめ細やかな舌触り、土っぽいニュアンスがあり、複雑性が感じられますが全体的に丁寧にまとめられている優等生的な佇まいです。
果実のボリュームが強くいかにも温暖な地域で造られたという印象のものが多かったピノ・ノワールのワインの中で、こちらはあからさまな”暑さ”を感じず、品があり奥ゆかしい。私の好みのタイプのピノ・ノワールでした。
33.ピノ・ノワール 2020 (ドリフック)
ピノ・ノワールらしいかと言われると迷いますが、樽のニュアンスが高い酸味とバランスを取り、溶け込んでシルキーな印象になっていて、これはこれで良いなと思いました。
34.ピノ・ノワール サンドストーン 2022 (キャサリン・マーシャル)
個人的により好みだったのはこちら。33よりもよりタイトな印象で、樽の香りも上品に感じました。
35.ピノ・ノワール 2018 (アタラクシア)
ここまで飲んだ赤ワイン中では、抜群の芳香性を誇ったのがこのアタラクシアのピノ・ノワール。やはりアタラクシアはすごいなと感心させられます。お値段がもう少し優しいと嬉しいのですが。
42.ウルフトラップ・レッド 2022 (ブーケンハーツクルーフ)
これは今回の試飲会の中で一番の掘り出し物かもしれません。ジューシーで豊潤な果実味の中にスパイシーなニュアンスなど、たっぷり楽しめます。小売価格は1,600円。この価格にはとても驚きました。
44.シラーズ 2019 (ハーテンバーグ)
元々シラーやシラーズが好きなのですが、こちらはいい意味での雑味というか、複雑性の中に少しビターなニュアンスがあってよかったです。シラーズというと果実味が他の要素を圧倒してしまったり、樽の甘やかな風味が悪目立ちしてしまったりするものも多いのですが、こちらはそうではなくいい意味で無骨な印象がありました。
47.シラー 2016 (キアモント)
この並びの中でおそらく多くの方が一番感銘を受けたのがこちらのワインなのではないでしょうか。自社倉庫で保管して熟成が良い塩梅に進んだところで、今回出しているそうです。とにかくその滑らかな感触は妖艶。樽感もしっかり感じられ、エレガントな中にも豊潤さが感じられます。
48.セダバーグ シラー 2020 (ダーマシーン)
赤ワインで私が抜群においしいなと感じたのはこちらのダーマシーンのシラー。産地はスワートランドです。果実味、ミネラル、スパイスの豊かさとバランス、エレガントさ、土のような滋味深さを感じました。
54.カベルネ・ソーヴィニヨン 2022 (ラステンバーグ)
私が珍しくカベルネ・ソーヴィニヨンでおいしいと感じたのがこちら。シルキーなタンニンが印象的でした。
56.ファイブ 2020 (コンスタンシアグレン)
48に加えて、私が特に気に入ったのがこちらのカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンの他、メルロー、マルベック、カベルネ・フランがブレンドされています。
様々な品種から構成される複雑な果実味の中で、カベルネ・ソーヴィニヨンの要素がとても上手く効いていて、香水のような華やかさ、青いアクセントがワインの個性をより強力にしているように思います。カベルネ・ソーヴィニヨン主体ながらこちらもやはりきめ細やかでシルキー、スムーズな舌触りが好感触でした。
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