2023年2月24日(金) 南青山のリストランテ「Etruschi (エトゥルスキ)」にてトスカーナのワインブランド「BIBI GRAETZ (ビービー グラーツ)」のプレスイベントが行われた。
今回のプレスイベントはインポーターのピーロート・ジャパンが、2023年3月1日からこのBIBI GRAETZのワインを独占販売することを記念したイベントとなっている。
BIBI GRAETZについて
ビービー・グラーツのワイナリーは2000年、フィレンツェを見下ろすフィエゾーレの丘に設立。
著名な彫刻家の父を持つビービー氏は、フィレンツェ美術学校を卒業後にワイン造りに専念することを決意。
彼のトスカーナワインは、サンジョヴェーゼとアンソニカを主体にした古木のブドウから造られている。比較的新しいワイナリーながら、古くから住居の敷地内にあったブドウの樹があったことから、ものによっては樹齢100年を超える古木もあるというから驚きである。
ワインのラインナップ
会場では、今回ピーロート・ジャパンが取り扱う3つのレンジの赤ワインと白ワイン、計6種を実際にテイスティングしながら特徴を知ることができた。
最も手頃なレンジのカザマッタ、
ミドルレンジ(と言っても十分に高価である)のテスタマッタ、
最高級レンジのコローレである。
CASAMATTA BIANCO カザマッタ ビアンコ
カザマッタとはイタリア語で「狂気の家 (Crazy House)」を意味する。
トスカーナ州南部の、ティレニア海に向かって突き出した半島上に位置するアル
ジェンターリオで育つ、歴史あるヴィンヤードのブドウから造られている。
品種はヴェルメンティーノ60%、トレッビアーノ30%、アンソニカ10%。
海から近い産地ということで塩気が感じられるワインだと紹介があったが、それ以上に私が感じたのは素晴らしく熟した重層的な果実の香りだ。黄桃、花梨、ほのかにパッションフルーツやエキゾチックフルーツのニュアンス。
口に含むと線の細い直線的な酸味が舌の上を走り抜け、爽やかな柑橘の風味と、香りにも感じたエキゾチックフルーツの独特なくぐもった香りが鼻に抜けていくのが感じられた。
CASAMATTA ROSSO カザマッタ ロッソ
赤ワインは、3種ともすべてサンジョヴェーゼ100%と潔い。しかし、全く異なる個性を見せてくれるから面白い。
こちらは熟したイチゴやラズベリーなどの赤い果実のニュアンスに加えて、八角のような芳香も感じられた。酸味・担任ともに穏やかで、最も手の届きやすい価格帯らしくまろやかな口当たりでフレンドリーな印象を受けた。
私が最も気に入ったエチケットのデザインはこちらのテスタマッタ ビアンコのものだ。全面に広がる美しい情景と、白ワインの色味に馴染んで境界線がなくボトル全体が芸術作品のように見えるところが特に心を踊らせる。
品種はアンソニカ100%。
ジリオ島のセローネの単一畑のブドウから造られ、ブドウは小さい籠で全て手収穫。
除梗後、ドライアイスを使いながら優しく圧搾し、約1時間果汁と果皮を静置する。短いマセラシオン後、マストはステンレスタンクで約48時間低温で澱引き。225ℓの新樽に移し、20°Cでアルコール発酵を行う。澱とともに12ヶ月間熟成。マロラクティック発酵はせず、瓶詰めされる。
カザマッタ ビアンコよりもさらに花のような生き生きとした香りが強調され、黄桃やマンゴーはより熟した印象の香りとなっている。樽由来のトーストやパン、ほのかにバタークッキーのような香りも感じられる。
酸味は高いが、豊かな果実とのバランスが秀逸である。
サンジョヴェーゼ100%。
手収穫されたブドウは、畑とワイナリーでそれぞれ選果が行われる。
発酵は土着酵母による自然発酵で。小樽と大樽、ステンレスタンクなどでパンチダウンとポンピングオーバーを行い、7~10日間のマセラシオンの後に20ヶ月間熟成。
しっかりと熟したイチゴ、レッドチェリー、プラム。
樽由来のトースト、焦がした木、杉のほか、ヴァニラやクローヴなどの甘やかな印象も。
タンニンははっきりと感じられ、酸味もシャープで、エレガントながらも骨格の感じられるスタイルであった。
品種はアンソニカ100%。
ジリオ島にある急斜面の、テラス棚になったヴィンヤードのブドウから造られる。
斜面が海からの強い風をしのぎ、ブドウ樹を守っているとのことだ。
コローレ ビアンコは香りからして明らかに他の2本の白ワインと異なる。
トーストやアーモンドクリーム、黄桃のデニッシュパンなど、香ばしさや甘やかな香りが最も印象的だ。
口に含んでみても、はっきりとした酸味とよりクリーミーな印象が際立つ。
ボリュームがしっかりと感じられる一方で、爽やかさも共存するのはこの標高の高さや海風からくる酸味の高さゆえだろう。
COLORE ROSSO コローレ ロッソ
品種はサンジョヴェーゼ100%。
成熟した赤系果実の香りに、ヴァニラやナツメグ、八角、すみれの花。
穏やかで複雑な丸みを帯びた香り。
酸味とタンニン、果実味のバランスは絶妙。
タンニンはやや多いがまろやかで、舌にするりと馴染む。
エトゥルスキの料理とのペアリングランチ
提供された料理は全7品。エトゥルスキの料理長 前田拓也氏が実際にビービー グラーツのワインを試飲した上で設計されたフルコースだ。
アミューズ① 玉ねぎを使ったアミューズ
玉ねぎからできた、味も食感も異なる3品が一皿に集まっている。左手奥がシフォンケーキのような食感、手前はパリパリとスナックのように気軽で、右奥は玉ねぎのジュレがサンドされている。
アミューズ② まるで茶碗蒸し?うにの乗ったアミューズ
私が海老が苦手ということで、上に乗せる食材を雲丹に変更していただいた。
アオリイカのインサラータ カリフラワーと晩白柚(ばんぺいゆ)
クエのソテー ちぢみほうれん草 ビスクソース
フェットチーネ ウサギとグリンピースのラグー
兎肉と聞いて一瞬ぎょっとしてしまったが、イタリアでは普通に食されている食材。高タンパク低カロリーで味わいはあっさりしていて鶏肉に似ている。
料理とワインのペアリングで有名な南青山のフレンチレストランL’ASでも一時期コース料理の一品に出していたそうだが、日本人には兎肉に抵抗感がある人が多く不評だったため予定よりも早くコースの内容を変更したということもあったそう。
青森銀の鴨ロースト ホワイトアスパラガスとタケノコ
柑橘のヴァリエーション リコッタのムース
食事の最後には、エスプレッソとお茶菓子までいただいた。
このお茶菓子がまた美味しく、ビービー グラーツのワインのエチケットをイメージしたものになっているからまた洒落ている。
ビービー グラーツのワインはまさに芸術家肌なワイン。
ワイン自体の味わいはもちろん、ワイン造りの背景やストーリー、デザインに至るまで、あらゆる側面から私たちを楽しませてくれるだろう。
「カジュアルに楽しんでほしい」というピーロート・ジャパンの平谷さんのお言葉どおり、まずは最もカジュアルなカザマッタ ロッソとカザマッタ ビアンコから手にとってみてほしい。
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