ドメーヌタカヒコ 収穫ボランティア体験記【タカヒコさんのお話篇<前編>】

Wine Trip

ドメーヌタカヒコの収穫ボランティアに参加した際にタカヒコさんから伺ったお話を載せていきます。

()内は後から私が補っている部分です。


北海道や日本のワイナリーにご興味がある方は、ぜひ以下の書籍も読んでみてください!

気候と貴腐ワインについて

ドイツやフランスのアルザス地方くらい寒ければ、きれいに貴腐になりやすい。寒いエリアの病気は貴腐がほとんどを占めているので、その腐ったブドウで貴腐ワインを造っている。

ドイツでは貴腐ブドウをほとんど選果しない。しかしボルドーのソーテルヌ地方などでは温暖になるので、選果が必要になる。ボルドーよりさらに温かいエリアでは貴腐ブドウを得るのはほぼ不可能。

これが、今ドメーヌタカヒコで懸念している温暖化の貴腐への悪影響だ。

40年前まで、余市町はシャンパーニュくらい寒くて、貴腐の王国だった。そこからアルザス地方やドイツと同水準になり、ここ最近ではブルゴーニュの温暖エリアの水準に入ってきた。

ブルゴーニュでは貴腐ができるとはあまり聞かない。温かい分、少し複合感染が始まる。それよりさらに暖かくなると超複合感染になっていくので、貴腐だけで適当に造るというのは難しい時代になる。


今年は暖かかった。
東京の方も札幌の方も感じていることだと思う。

病気に関しては今まで見たことがない病気が出ている。どうなるのか正直わからない。
選果をしてもらう予定だが、うちのスタイルはあまり細かく選果をやらない。
今回に関しては未知の腐敗果が入るかもしれない。仕込んでみて失敗したら捨てようと思っている。

今みなさんが飲んでいるワイン(配られている試飲用ワイン)は腐ったブドウなので、元々農家さんたちが捨てているブドウ。でも、おいしくなった。なので最近は一番高い値段を付けている。(一同大笑い)

今年やってみて、ダメであれば捨てようかなという覚悟の年と考えている。

昨年も暖かったのでブラン・ド・ノワールはあまり作れなかったが、それと比べてもまた違うスタイルになりつつある。



作業説明

貴腐菌には脱色酵素がはたらいている。干しぶどうのように萎んでいく。
菌糸が入り込んで(ブドウの粒の中の水分が)蒸発していって干しぶどうになる、というのが一番理想的な形。

余市町では、本州で問題になっているような晩腐病はほとんどないが、晩腐病でも似たような腐り方をする。菌糸ではないが、萎んでいく。

ウチの考え方としては、ブラン・ド・ノワールについては、萎んでいくのは全く問題ない。ただ、嫌なのは発酵による腐敗。

虫や鳥がつついたり、玉割れ(にも悩まされる)。今年は特に、下方の畑では水はけがよくないので玉割れも多い。ブルゴーニュでも土が浅いほうがいいものができるとされているが、土が深いといろいろなリスクがある。
利点もあるがリスクの方がやや多いかな。
こういう雨の多い年は保湿力が多い(のが裏目に出る)、樹勢も強いので玉割れがしやすい。割れると腐っていく。腐敗が周囲に感染していく。

発酵というのは赤ワインでは醸す。発酵によって色素を抽出するイメージ。
焼酎にブルーベリーを入れると赤くなる。水に入れても赤くならない。焼酎は色素を抽出するから。
ブドウにもあるアントシアニン色素が抽出されることによって赤くなる。

ひどい塊があればその房、その部分は捨ててほしいが、あまり神経質にならずに作業を進めてほしい。
ウチのワイナリーの一番の目的はピノ・ノワールの赤ワインを造ることなので。

ということで、今までとはちょっと違った雰囲気の収穫になると思う。


今年、今までとは違うことでいうと青い粒(若い緑色の粒)がある。山梨などで”青ぬき”と言っているやつ。今年はそういう現象が(ドメーヌタカヒコの畑でも)起きている。ピノ・ノワールの黒い粒の中に青い粒がポツンとある。これはブラン・ド・ノワールにも使えないので除去してほしい。


昨日、雨量計を見たら70mmの雨が降っている。この時期に70mmというのはなかなかなく相当多い。畑がぐちゃぐちゃ。

コンテナに泥がついてしまうとコンテナを重ねたときにブドウに泥がついてしまうおそれがあるので気をつけてほしい。


今年のもうひとつの特徴としてミルランダージュが起きている。終了が減っている。
本来うちは16tくらい。1万6000本くらいのワインができる。(が今年はちょっと少ない)


ドメーヌタカヒコでは除葉もほとんどしていない。除葉をしすぎるとブドウが過熟してしまう。あまり熟しすぎた香りも好きではないので、(除葉しないことで生まれる)スパイシーな香りやハーブ香をプラスと考えている。
ただし、収穫の邪魔になるようなら葉や枝はある程度切ってもらって問題ない。

今、草刈りをしてしまうと灰カビ病になりやすい。ブドウに植物の死骸がつくと灰カビ病になってしまうのだ。だから特に収穫の近づく秋には草刈りを行っておらず、草がボーボーの状態。
なので、房が草に隠れている場合もあるから見逃さないように注意してほしい。

また、ドメーヌタカヒコの畑は有機栽培なので、蜘蛛が多い。
蜘蛛の巣はワイン造りには影響がないのでそのままで大丈夫。蜘蛛や虫がいたら外に逃がしてほしい。


作業前のお話しについてはここまで。

作業中(休憩中)や作業後のお話についても後日アップ予定です。

その他の記事もぜひご覧ください。

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