GAKUFARM &WINERY 訪問記(長野県松本市)

Wine Trip

2023年6月某日。かねてより訪問を希望していたGAKUFARM & WINERY (ガクファーム アンド ワイナリー)への訪問が叶いました。

GAKUFARM & WINERY (以降、本記事の中では「ガクファーム」の略称を用いる)は、2020年創業の北アルプスなどの3000メートル級の山々に囲まれた自然豊な信州松本平に位置するガレージワイナリー。

標高600〜700mほどの場所に2箇所の畑があり、一方は塩尻市の北西部・岩垂原に、もう一方は自宅兼醸造所のある松本市の松本平に位置します。高地ゆえの冷涼な空気と強い陽射し、昼夜と年間の気温差が大きく雨の少ない内陸性気候の恩恵を受けています。

畑の管理、ワインの醸造を行うのはオーナー夫妻の古林(こばやし)利明さんといつ子さん。二人でおよそ70〜90アール(70アール=7,000平方メートル・およそサッカーコート1枚分)の畑を手入れしているそうです。

ワイナリーの由来は山岳の「岳」。この町と関わり合いたいと思い、シンボル的存在の山岳から名付けたそうです。
ロゴにある山のイラストは、ワイナリーからも望める穂高岳がモチーフだそうです。

畑に植えられているブドウ樹はのべ2000本に及び、訪問した6月中旬現在は芽かきと枝入れの作業中でした。

栽培している品種はおよそ10種類。
白ブドウ品種はシャルドネ、シュナン・ブラン、ピノ・グリ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブラン。
黒ブドウ品種はメルロー、カベルネ・フラン、シラー、ピノ・ノワール、サンジョベーゼ。

桔梗ヶ原(岩垂原)と松本平では土壌が全く異なるため、それぞれに適した品種を植えています。

桔梗ヶ原(岩垂原)は火山灰土で、メルローやピノ・グリを中心に栽培。

松本平は扇状地であることから礫質や粘土、砂など様々な地質が混在しており水捌けが良いそうです。

この日、見学させていただくのは松本平の畑です。
塩尻駅からタクシーで向かう道に面している畑にはシュナン・ブランが植えてありました。

オーナーの古林利明さん

シュナン・ブランは皮が薄く病気になりやすいため、もう少し生育期間が進むとレインカット(雨除けの傘)を行うそうです。
色々と造り方を試しているそうで、収穫を遅い時期まで引っ張ってデザートワインにすることもあるそう。
シュナン・ブランを選んだのはシュナン・ブラン好きの友人の影響で、シュナン・ブランはおもしろそうだと感じたためだそうです。

また、驚いたことに使っている苗木のうち95%を自分で作っているそうです。ご両親が農家さんだった故なのかもしれませんね。

こちらの畑のシュナン・ブランは樹齢4〜5年だそうです。

シュナン・ブランの樹。開花の時期を迎えていました。

シュナン・ブランの隣にはメルローの樹の列があります。

よく見ると合間合間に小さな樹があります。

左がメルローの樹、右がカベルネ・フランの樹

元々はメルローを植えていましたが、現在はカベルネ・フランに植え替えを行っている最中とのことです。水捌けの良い地とのことだったので、よりカベルネ・フランに適していると考えられたそうです。

さらに奥の畑に進むと、シャルドネの樹がありました。

シャルドネの樹を横目に歩くと、立派な家庭菜園も。
玉ねぎ、ズッキーニ、じゃがいも、トウモロコシなどが採れるそうです。

そのまま歩みを進めていき、ワイナリーを挟んで最初に見た畑と反対側の畑まで行くと、まだ小さなブドウ樹が植わっていました。

2〜3年ほど前に定植したばかりの畑で、ヴィオニエやシュナン・ブラン、シラー、ソーヴィニヨン・ブランが植えられています。
各品種の本数はまだ少ないため、フィールドブレンドにすることを見込んでいるとのことでした。

可愛らしい大きさのヴィオニエの花
前に見た畑のものよりまだ細いシュナン・ブランの樹
この2列はソーヴィニヨン・ブラン。片方の列は肥料を撒いてみたそうで、比較中とのことです。

ぐるりと畑を廻ったところで、醸造所を見せていただきます。元々車庫だったところを改装したそうです。

外から覗くのみの見学でしたが、圧搾機はバルーンプレスではなくバスケットプレスを使用していると教えていただきました。バルーンプレスは圧搾前に設定を行う必要がありますが、バスケットプレスであれば、様子を見ながら圧を変えられるのが良いそうです。



さて、いよいよお待ちかねの試飲タイムです。

通常であれば試飲スペースを使われているようですが、今回は人数が多かったためご自宅に隣接しているテラスにお邪魔させていただきました。


マツモトシードル ブナドライ

実は密かにずっと飲んでみたかったガクファームさんのシードル。「本当はスパークリングワインでも飲みたい気分でしょうが…」とおっしゃりながら出してくださいましたが、私としてはシードルで万々歳!アルコール度数8%とワインよりは軽いので、優しく染み入ります。

シナノゴールドやシナノスイートなどの6種類のりんごとラ・フランスをブレンドしてあるそうで、爽やかさの中にも濃厚さがあり大変満足感がありました。


Coiling ヤマブドウ 2022

続いて、ヤマブドウの「Coiling コイリング」です。ワインの名前には山にちなんだものをつkているそうで、”Coiling”はザイルを巻き取ることを指すそうです。ヤマブドウの蔓が山の木に巻き付いている様子をイメージしたとのこと。

古林さんの畑にはヤマブドウはないので、こちらは農家さんから購入した買いブドウから造っているとのこと。穂高連峰から流れ出る梓川沿いで栽培されているブドウを野生酵母によって発酵させているそうです。

野生酵母を使うポリシーなのですか?と訊ねたところ、必ずしもそうではない、とのこと。

まず一番にはおいしいものを作ること。
それに必要なら野生酵母も培養酵母も選択肢に入ります、だそうです。

このワインは私の中でのヤマブドウのワインのイメージがかなり変わったように思います。率直に言って、今まで飲んできた生食用ブドウのワインの中でも抜群においしい。軽やかでジューシー、カシスのような果実のニュアンスが特に印象的でした。
生食用ブドウで私がよく感じるジャムっぽさがなく、こんなおいしいヤマブドウあるんだ!と驚きました。


IMA シュナン・ブラン 2021

こちらはシュナン・ブランです。先程畑でシュナン・ブランからデザートワインも造ったと仰っていましたが、こちらは辛口の白ワインです。

しっかりと厚みが感じられて、白ワインながら飲みごたえあり美味しかったです。シュナン・ブランの魅力をひしひしと感じます。


Morgen メルロ 2021

こちらはメルローです。フレンチオークとアメリカンオークの新樽と古樽で14ヶ月しっかりと熟成したとのことで、かなりしっかりと樽の香りが感じられました。特にアメリカンオークのココナッツやバニラのニュアンスが心地よく、成熟したブドウの果実香とよく溶け合っています。抜栓直後にもかかわらずタンニンは非常に滑らかに感じられ、メルローらしいふくよかさとボリュームが楽しめる素晴らしい一本でした。


シュナンブランのオレンジワイン

IMA シュナン・ブランもしっかりと芳香が感じられるタイプでしたが、オレンジワインにしたこちらのシュナン・ブランは芳香がより強く感じられました。

飲み口にもこれまたしっかりとした厚みがあり、より複雑性が楽しめるワインでした。タンニンは控えめで受け入れやすく、食中酒としても楽しめそうだなと思いました。


古林さんのご厚意に甘えてすっかり見学と試飲を楽しみました。

このあと、広丘駅方面に移動してランチをいただきます。

ワイナリー情報

GAKUFARM&WINERY (ガクファーム&ワイナリー)
所在地 長野県松本市笹賀171-5
MEIL info@gakufarm.jp
URL https://gakufarm.jp/

東京から長野県塩尻市・松本市のワイナリー訪問に際してはこちらもご参考ください。

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